ウェルビーイングとSDGsの関連性とは?注目される背景や実現方法なども解説

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ウェルビーイングとSDGsには、深い関連性があります。どちらも近年注目を集めている概念ですが、一体どのようなつながりがあるのか分からない人も多いでしょう。

そこで本記事では、ウェルビーイングとSDGsそれぞれの概要を解説するとともに、両者の関連性を紹介します。注目される背景や実現方法なども解説するため、参考にしてください。

ウェルビーイング経営とは

WHO憲章では、健康について「単に病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも精神的にも、そして社会的にも、すべてがよい状態であること」と定義されています。

近年は、この考え方を経営戦略や人材戦略に取り入れた「ウェルビーイング経営」に取り組む企業が増加しています。

ウェルビーイング経営が注目される3つの理由

ウェルビーイング経営が注目される背景には、次の3つの理由があります。

1.働き方改革

日本では長時間労働やサービス残業が社会問題化したことに加えて、新型コロナウィルスの流行も一因となり、働き方改革が推進されてきました。働き方改革の一環として労働環境を整備することは、ウェルビーイング経営の実現につながります。具体的には、長時間労働の是正や勤務体制の見直しなどの取り組みが該当するでしょう。

2.多様性の広がり

近年、国籍や性別といった固定的な概念にとらわれず、個人の価値観の多様性を理解し、尊重するべきであるという考え方が浸透しつつあります。多種多様な価値観やバックボーンを持つ人材を受け入れる体制が整えば、それぞれが自分の能力を最大限に発揮しやすくなるでしょう。企業は多様な人材が活躍し、更なる企業成長につなげられるような職場環境を整える必要があります。

3.労働人口の減少

日本では少子高齢化により、労働人口の減少が進行しています。このまま労働人口が減少すれば、人材確保の難易度はますます上がっていくでしょう。求職者に選ばれ、今いる人材にも長く働いてもらえる企業になるためには、働きやすくやりがいを感じられる職場環境を整える必要があるため、ウェルビーイング経営の考え方に注目が集まっています。

ウェルビーイング経営に取り組むメリット

ウェルビーイング経営に取り組むと、次のようなメリットを期待できます。

モチベーションや生産性の向上

従業員が健康かつ幸福を感じられる状態であれば、集中力や判断力が向上し、少ない労働時間で最大限の成果を上げることができるでしょう。従業員の生産性向上は、企業の業績アップに直結します。

実際に、さまざまな研究や調査により、ウェルビーイングと生産性に関連があることが示唆されています。たとえば、「株式会社アドバンテッジリスクマネジメント」の調査によると、ウェルビーイングと生産性には中程度から大きな相関関係があることが、明らかになっています。

※参照:顧客企業 272 社、28.8 万人のメンタルデータを分析 従業員のウェルビーイングと生産性の相関が明らかに|株式会社アドバンテッジリスクマネジメント

従業員エンゲージメントの向上

ウェルビーイングと従業員エンゲージメントには、密接なかかわりがあります。従業員の健康増進や職場環境の改善など、ウェルビーイングを実現するための取り組みは、従業員エンゲージメントの向上につながるでしょう。

良好な人間関係の構築

心身ともに健康で社会的にも満たされた状態であれば、精神は自然と安定します。従業員の精神状態が安定すれば、むやみに人を傷つけることがなくなり、人間関係のトラブルを起こす可能性も低くなります。ウェルビーイングに関する取り組みは、社内のよりよい人間関係の構築にもつながるといえるでしょう。

離職率の低下

ウェルビーイングに取り組むと、企業に対する従業員の満足度が高まり、離職率の低下につながります。また、心身の健康を高める取り組みを実施すれば、健康上の理由による離職も減らすことが可能です。

企業イメージの向上

ウェルビーイングに関する取り組みは、社外に対しても好印象を与えます。顧客からの信頼を勝ち取れたり、求職者から選ばれやすくなったりと、対外的にもさまざまなメリットがあるでしょう。

SDGsとは

近年よく耳にするSDGsですが、一体どのような意味を持つのでしょうか。ここでは、SDGsについて詳しく解説します。

持続可能な成長を実現するための国際目標

SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略称で、持続可能な成長を実現するために設けられた世界の共通目標です。2015年の国連サミットで採択され、2030年までの達成を目標に掲げています。

17の目標達成項目

SDGsは17の目標達成項目で構成されており、国際社会が進むべき方向を示しています。

・目標1:貧困をなくそう

・目標2:飢餓をゼロに

・目標3:すべての人に健康と福祉を

・目標4:質の高い教育をみんなに

・目標5:ジェンダー平等を実現しよう

・目標6:安全な水とトイレを世界中に

・目標7:エネルギーをみんなに、そしてクリーンに

・目標8:働きがいも経済成長も

・目標9:産業と技術革新の基盤を作ろう

・目標10:人や国の不平等をなくそう

・目標11:住み続けられるまちづくりを

・目標12:つくる責任、つかう責任

・目標13:気候変動に具体的な対策を

・目標14:海の豊かさを守ろう

・目標15:陸の豊かさも守ろう

・目標16:平和と公正をすべての人に

・目標17:パートナーシップで目標を達成しよう

ウェルビーイング経営と関連性のあるSDGsの目標達成項目

SDGsが掲げる目標のうち、ウェルビーイング経営と関連が深いとされている項目が目標3と目標8です。それぞれの項目とウェルビーイング経営との関連性について、以下で解説します。

目標3:すべての人に健康と福祉を

目標3「すべての人に健康と福祉を」は、誰もが健康で幸福な生活ができることを目指すものです。従業員の心身の健康を保ちながら、幸福な社会の実現や企業の成長を目指すという点で、ウェルビーイング経営との関連が深いとされています。

目標8:働きがいも経済成長も

目標8「働きがいも経済成長も」は、包括的かつ持続的な経済成長とともに、誰もが生産的で働きがいがあり、人間らしく働ける環境を目指すものです。長時間労働の是正や勤務体制の見直しなど、従業員のウェルビーイング実現に向けた労働環境改善に関する取り組みは、目標8の達成にもつながると考えられます。

SDGs達成にもつながるウェルビーイング経営の実現方法

ウェルビーイング経営を実現し、さらにSDGsの達成につなげるためには、次のような取り組みが必要です。

労働環境の改善

多様な働き方を受け入れ、誰もが安心して働ける環境を整えましょう。具体的な取り組みとしては、フレックスタイム制やテレワークの導入、育児休暇の取得促進などが挙げられます。

コミュニケーションの活性化

コミュニケーションツールの導入や、リフレッシュスペースの設置などの施策により、コミュニケーションをとりやすい環境を整えることも重要です。社内のコミュニケーションが活発化すれば、良好な人間関係を築けるようになり、定着率やモチベーションの向上にもつながります。

健康増進のサポート

ウェルビーイングを実現するためには、従業員の心身の健康増進をサポートすることも大切です。健康診断やストレスチェック、定期的な運動の推奨などを実施するこにより、従業員が健やかでいきいきとした毎日を送れるよう支援しましょう。

ウェルビーイングを測定する指標

従業員のウェルビーイングを測定する際には、下記のような指標を用いたアンケートを実施するとよいでしょう。

経済協力開発機構の「よりよい暮らし指標」

経済協力開発機構(OECD)は、ウェルビーイングに関連する「よりよい暮らし指標」として、次の11の項目を示しています。

1.住宅

2.所得と富

3.雇用と仕事の質

4.社会とのつながり

5.知識と技能

6.環境の質

7.市民参画

8.健康状態

9.主観的幸福

10.安全

11.仕事と生活のバランス

Gallap社による指標

世論調査やコンサルティングを手がけるGallap社によると、ウェルビーイングには次の5つの要素が含まれます。

Career Wellbeing(キャリア・ウェルビーイング)仕事に対して良好な状態  
Social Wellbeing(ソーシャル・ウェルビーイング)人間関係が良好な状態  
Financial Wellbeing(ファイナンシャル・ウェルビーイング)経済的に良好な状態  
Physical Wellbeing(フィジカル・ウェルビーイング)身体的に良好な状態
Community Wellbeing(コミュニティ・ウェルビーイング)地域や団体との関係性が良好な状態

PERMAの法則

ポジティブ心理学の創始者であるマーティン・セリグマン氏は、ウェルビーイングの概念として考案された、「PERMAの法則」を提唱しています。同モデルに含まれる要素は、以下のとおりです。

Positive Emotion (ポジティブエモーション)ポジティブな感情
Engagement (エンゲージメント)エンゲージメント
Relationships (リレーションシップス)良好な人間関係
Meaning (ミーニング)意味や目的
Accomplishment(アコンプリシュメント)達成感

国内におけるウェルビーイングの取り組み事例

近年は、日本国内でもウェルビーイングに取り組む企業が増えています。ここでは、国内におけるウェルビーイングの取り組み事例を紹介します。

事例1:楽天グループ株式会社

楽天グループ株式会社は、楽天健康宣言として「Well-being First」を掲げ、従業員の心身の健康と社会的なウェルビーイングの向上に取り組んでいます。「定期検診受診率、ストレスチェック受検率100%」や「メンタルヘルス不調者を出さない職場づくり」などの健康課題を掲げたうえで、それぞれに適した施策を実施しているのが特徴です。

代表取締役社長をトップとして、健康・安全・ウェルネス経営の推進体制を、グループ全体で構築しています。

事例2:味の素株式会社

味の素株式会社は、事業内容である「食」とウェルビーイングの関係性に着目し、さまざまな取り組みを行っています。同社では、ダイバーシティと働き方改革を推進し、コロナ前からテレワークを推進してきました。また、従業員専用の健康管理サービス「My Health」も提供しており、1人ひとりの健康状態や就労データを総合的に管理しています。

事例3:株式会社ローソン

株式会社ローソンでは、「明るく・楽しく・元気に 働きがいのある職場の実現」という健康ビジョンを掲げています。社長自ら健康ステーション推進委員会委員長となり、健康経営を強化・牽引しているのもポイントです。専門スタッフ常駐の「ローソングループ健康推進室」を設置し、人事本部や健康保険組合などとも連携し、多彩な施策を行っています。

まとめ

ウェルビーイング経営の実践、ひいてはSDGsの達成に取り組むことは、企業にとって大きなメリットがあります。誰もが元気に、いきいきと働ける企業を目指し、健康増進サポートや労働環境整備などに取り組みましょう。

ウェルビーイングを実現するためには、従業員の「ファイナンシャル・ウェルネス」に対する取り組みも重要です。従業員の経済的な不安を解消できれば、精神的なストレスが緩和され、社会的にも満たされた状態に導くことができます。

株式会社オンアドでは「従業員のお金の悩み解決」を通じてウェルビーイング向上をサポートする「お金の福利厚生サービス」を提供しています。ご関心をお持ちの方はお気軽にお問合せください。


この記事を監修した人

株式会社オンアド

株式会社オンアドは野村ホールディングス、千葉銀行、第四北越銀行、中国銀行の4社により設立された投資助言会社です。「すべての人が最善のアドバイスにより、理想の未来をかたちにする」というビジョンのもと、商品販売を一切行わず、アドバイスに特化した新しい金融サービスをオンライン完結でご提供します。

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