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ウェルビーイング向上の施策やポイント|日本の現状や注意点、メリットも解説
ウェルビーイング |
近年は、日本国内でもウェルビーイングの向上に取り組む企業が増加しています。しかし、「自社でもウェルビーイング向上に取り組みたい」と考えても、なにから始めればよいかわからないというひとも多いのではないでしょうか。そこで本記事では、ウェルビーイングを向上させる方法やポイント、注意点などを解説します。
目次
ウェルビーイングの向上とは
ウェルビーイングとは、社会的・精神的・肉体的に満たされている状態のことです。医療や社会福祉分野で用いられることが多い言葉ですが、近年はビジネスシーンでも使われるようになりました。
ビジネスにおけるウェルビーイングの向上とは、主に従業員を中心としたステークホルダー全員が心身ともに健康で、社会的にも満たされており、幸福である状態を目指すことです。また、このようなウェルビーイングの考えを取り入れた経営手法を、「ウェルビーイング経営」と呼びます。
2021年頃から注目を集める
日本においてウェルビーイングが注目を集めはじめたきっかけは多くありますが、2021年に政府が発表した「成長戦略実行計画」において、「国民がwell-beingを実感できる社会の実現」を成長戦略の一つとして位置付けたことが大きいでしょう。また、新型コロナウィルスの感染拡大によって働き方や生活のあり方に関する考え方が大きく変化したことも理由として挙げられるでしょう。近年では、健康経営や人的資本経営の取り組みが拡大していることもあり、企業経営の在り方を考える上での重要な要素の一つとしてウェルビーイング概念への注目が高まっています。
日本国内のウェルビーイングの現状
ここでは、日本におけるウェルビーイングの現状について解説します。
日本のウェルビーイング実感度は3割程度
ウェルビーイング学会が2022年に発表したレポートによれば、日本は1958年以降の経済成長でGDPが5倍近くになったにも関わらず、人生の満足度にはほとんど改善が見られなかったようです。またウェルビーイング実感の高い人の割合は、調査年度による差はあるものの、概ね2~3割程度の範囲にとどまっていることがわかっています。
※出典:Well-being Report Japan 2022 ウェルビーイングレポート日本版2022
日本でウェルビーイング施策に取り組んでいる企業は約半数
株式会社月刊総務の調査によると、ウェルビーイングについて「とても取り組んでいる」「やや取り組んでいる」と回答した企業は、51.8%でした。国内においても、ウェルビーイングの注目度は年々高まっているものの、現状では約半数の企業が取り組めていないという結果になりました。
※出典:ウェルビーイングに取り組んでいる企業は約半数。測定のアセスメント実施は約2割にとどまる|月刊総務オンライン
ウェルビーイングを構成する要素
ここでは、ウェルビーイングの構成要素について解説します。
PERMAの法則
ポジティブ心理学の創始者であるマーティン・セリグマン氏は、ウェルビーイングの5つの構成要素を示す「PERMAの法則」を提唱しています。ウェルビーイングを構成する要素として以下5つの要素が提示されています。
Positive Emotion (ポジティブエモーション) | 意欲を持って取り組んでいる |
Engagement (エンゲージメント) | 時間を忘れて物事に没頭/夢中になる |
Relationships (リレーションシップス) | 他者と良好な関係性を築いている |
Meaning (ミーニング) | 人生に意味や意義を見出している |
Accomplishment(アコンプリシュメント) | 目標や夢を達成している |
ギャラップ社による定義
アメリカのギャラップ社は、ウェルビーイングは以下5つの要素からなると定義づけています。
Career Wellbeing(キャリア・ウェルビーイング) | 仕事・キャリア構築が良好な状態 |
Social Wellbeing(ソーシャル・ウェルビーイング) | 人間関係が良好な状態 |
Financial Wellbeing(ファイナンシャル・ウェルビーイング) | 経済的に良好な状態 |
Physical Wellbeing(フィジカル・ウェルビーイング) | 身体的に良好な状態 |
Community Wellbeing(コミュニティ・ウェルビーイング) | 所属する地域や団体との関係性が良好な状態 |
ウェルビーイングの向上に注目が集まる背景
ウェルビーイングの向上に注目が集まる背景には、次のような理由があります。
働き方改革の推進
2019年に働き方改革関連法が施行されたことをきっかけとして、長時間労働の削減や有給休暇取得の推進などが進んでいます。これら改革を進めるなかで、従業員の多面的な幸福を実現するための概念である、ウェルビーイングの考え方にも注目が集まるようになりました。
価値観の多様化
近年では、終身雇用制度の崩壊や転職の一般化、リモートワークの普及などにより、従業員が仕事に対してもつ価値観の多様化が進んでいます。企業経営においては、従業員の多様な価値観を尊重しつつその能力を最大限に発揮してもらうための取り組みが求められています。このような背景から、ウェルビーイングの考え方を企業経営に取り入れる動きが増えてきています。
人手不足への対策
日本では、少子高齢化による労働人口の減少により、人手不足が深刻化しています。
現在の従業員の離職を防ぎ、求職者からも選ばれる企業になるためには、働きやすい環境の整備と仕事にやりがいを感じられる環境を整えることが不可欠です。このような認識が広がる中で、ウェルビーイングの概念にも注目が集まっています。
ウェルビーイングの向上に取り組むメリット
ウェルビーイングの向上に取り組むと、次のようなメリットを期待できます。
従業員エンゲージメントが高まる
ウェルビーイング向上と従業員エンゲージメントには、密接なかかわりがあります。従業員のウェルビーイング向上に取り組むためには、健康増進のサポートや、有給休暇の取得促進など、労働環境の改善に取り組むことが不可欠です。働きやすい環境を構築することで、従業員エンゲージメントを向上させることができるでしょう。
モチベーションや生産性が向上する
従業員が心身ともに健康で、社会的にも満たされている状態を実現できれば、仕事へのモチベーションや生産性を高めることに繋がるでしょう。心身の健康面では、メンタルヘルスチェックの実施や健康増進のサポートといった「健康経営」の手法を取り入れることが効果的です。
良好な人間関係を構築できる
上司・部下間のコミュニケーション方法の見直しや、社内コミュニケーションツールの導入により、従業員間のコミュニケーションを活性化させることで、ウェルビーイング向上につなげることが出来ます。一人ひとりのウェルビーイングが向上することで、従業員同士の関係性がより良くなるという好循環を期待できるでしょう。
離職率の低下につながる
ウェルビーイング向上施策の一環として、従業員の心身の健康増進をサポートすれば、健康上の問題を理由とした離職を減らすことも可能です。従業員の多様性を尊重したウェルビーイング向上施策に取り組むことで、企業に対する愛着や帰属意識が高まり、離職率の低下へとつなげることが出来るでしょう。
企業イメージがアップする
ウェルビーイング向上に関する取り組みは、社外ステークホルダーに対しても好印象をもたらします。会社HPや統合報告書上などでウェルビーイング経営や人的資本経営に取り組んでいることをアピールできれば、顧客や投資家からの信頼を高められたり、採用活動での魅力づけになったりと、様々なメリットを得られるでしょう。
ウェルビーイングを向上させる施策
それでは、ウェルビーイングを向上させるには、一体どのような施策があるのでしょうか。ここでは、ウェルビーイング向上につながる施策を紹介します。
福利厚生を充実させる
ワークライフバランスの実現に役立つ制度を充実させれば、ウェルビーイングの向上を期待できます。たとえば、食事補助やリフレッシュ休暇の導入、宿泊施設やレジャー施設の割引制度などの福利厚生制度の充実が考えられるでしょう。
労働環境を見直す
独立行政法人経済産業研究所によると、労働時間が8時間を超えると生活満足度が徐々に下がり、10時間半を超えると急激に低下するとされています。長時間労働の是正やノー残業デーの設定、有給休暇取得の推進など、労働環境の見直しに着手することでウェルビーイングの向上にとりくみましょう。
※出典:労働時間が生活満足度に及ぼす影響-日本における大規模アンケート調査を用いた分析-|独立行政法人経済産業研究所
コミュニケーションを活性化する
職場のコミュニケーションを促進し、従業員同士が良好な人間関係を築けるようにしましょう。風通しがよく、意見を受け入れてもらえる環境が整うことで、心理的安全性を高めることができます。上司と部下のコミュニケーション方法の見直しや、社内コミュニケーションツールの導入などが検討できます。
健康増進をサポートする
従業員の心身の健康維持・増進をサポートすることも大切です。産業医や心理カウンセラーといった専門家への相談窓口を設置する、定期的な運動の推奨など、心身の健康につながる施策を実施しましょう。また、従業員自身によるセルフチェックやセルフケアの促進も重要です。
経営目標やビジョンの発信
従業員に対して企業の経営目標やビジョンを発信・共有することも重要です。企業理念や経営方針ゴと従業員の価値観に重なりを見出すことができれば、企業に対する信頼感も高まるでしょう。従業員が目的意識ややりがいを持って働けるようになれば、ウェルビーイングの向上を実現しやすくなります。
ウェルビーイングを向上させるためのポイント
ウェルビーイングを向上させるためには、次のポイントを押さえることが必要です。
定量的に状態を把握する
ウェルビーイングに関する取り組みを行う際は、現状を定量的に把握することが大切です。たとえば、ストレスレベルを数値化すれば、状況に応じた適切な対応をとりやすくなります。また、労働環境を改善するためには、労働時間や有給取得状況の把握が不可欠です。ウェルビーイング向上施策に取り組む際は、施策の効果や改善点が確認できるように取り組むことが重要です。
従業員の声を取り入れる
ヒアリングやアンケートなどを通じて従業員の声を反映すれば、ウェルビーイングの実現に向けて、より効果的な施策を打ち出せます。エンゲージメントサーベイツールなどを活用し、普段は気づくことが出来ない様々な声や状況を確認することが大切です。従業員目線にたった施策に取り組むことで、ウェルビーイング向上につなげることができるでしょう。
経営層の意識を変革する
ウェルビーイングを向上させるためには、経営層の意識改革が欠かせません。人材をコストではなく資本捉えて、その能力の最大化を目指す「人的資本経営」が注目を集めていますが、ウェルビーイング経営においても同様の目線が求められるでしょう。
ウェルビーイングの向上に取り組む際の注意点
ウェルビーイングに取り組む際は、次のようなポイントに注意しましょう。
ウェルビーイングの定義は一定ではない
個人が主観的に「満たされている」と感じる基準は、価値観や時代背景によってさまざまです。そのため、ウェルビーイングの定義は常に一定ではないといえます。「これが従業員にとっての幸せ」という固定観念を持たずに、従業員との対話を続けながら、柔軟に取り組むことが大切です。
短期間での効果を期待しない
ウェルビーイング施策の効果が表れるまでには、ある程度の時間が必要なケースが多いです。短期的な視点で見ればコストと見えてしまう可能性もありますが、中長期的な視点で見れば企業変革にとって重要な取り組みとなることもあるでしょう。施策の効果を定量的に把握し、PDCAを回しながら実行することが重要です。
まとめ
ウェルビーイングの向上に取り組むことは、従業員の幸福だけでなく、企業の持続的な成長という観点からも重要であることをみてきました。国際的な競争力の低下や人材不足が叫ばれる現在、あらためてウェルビーイングの考え方を経営に取り入れてみてはいかがでしょうか。ウェルビーイング向上施策として従業員の経済面でのサポートも効果的です。オンアドでは「従業員のお金の悩み解決」を通じてウェルビーイング経営を支援する「お金の福利厚生サービス」を提供しています。金融教育動画コンテンツやウェブセミナー、資産管理アプリや従業員向け個別相談サービスを通じて、従業員のウェルビーイング向上を支援します。ご関心をお持ちの方は、お気軽にお問合せください。
この記事を監修した人

株式会社オンアド
株式会社オンアドは野村ホールディングス、千葉銀行、第四北越銀行、中国銀行の4社により設立された投資助言会社です。「すべての人が最善のアドバイスにより、理想の未来をかたちにする」というビジョンのもと、商品販売を一切行わず、アドバイスに特化した新しい金融サービスをオンライン完結でご提供します。

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