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人的資本経営を進める際の課題とは?解決する方法やメリットについて解説
人的資本経営 |
近年、国内において人的資本経営への関心が増加しています。一方で、人的資本経営について詳細には把握できていないという人もいるのではないでしょうか。
本記事では、人的資本経営の概要や課題について解説します。人的資本経営について詳しく知りたい人は、参考にしてください。
目次
人的資本経営とは
人的資本経営とは、人材を企業の資本と捉えて価値を最大限に引き出すことによって、中長期的な企業価値向上を目指す経営手法のことです。一貫した定義はありませんが、経済産業省は人的資本経営について、以下のように定義しています。
人的資本経営とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方です。
引用:人的資本経営 ~人材の価値を最大限に引き出す~|経済産業省
人的資本経営が注目される背景
それでは、なぜ近年人的基本経営が注目されているのでしょうか。ここでは、人的資本経営が注目される背景について解説します。
SDGsやESG経営に対する関心の増加
近年、SDGsやESG経営など、持続可能な社会を目指した取り組みが、世界中で行われています。国内でも、SDGs・ESG経営に対する関心はますます増加傾向です。SDGs・ESG経営に対する関心の増加によって、人的資本経営にも注目が集まっています。SDGsやESG経営の意味は、以下のとおりです。
・SDGsとは:持続可能な経済成長を目指す目標のこと
・ESG経営とは:環境・社会・企業統治を重視する経営手法のこと
SDGs・ESG経営のいずれも、サステナビリティの考え方に含まれているのが特徴です。サステナビリティを重視して企業価値を高めるためには、人材の価値も大切にする必要があります。
ISO30414の公開
人的資本経営が注目される背景には、ISO30414が公開されたことが挙げられます。ISO30414とは、ISOが制定したマネジメントシステム規格のことです。このガイドラインには、人的資本に関する報告を、どのように実施すればよいのかの指針がまとめられています。ISO30414の公開によって、各国の企業が取り組んでいる人的資本経営の状況把握が可能になりました。
無形資産の価値向上
近年、グローバル化やデジタル化の影響によって、無形資産の価値が高まっています。人的資本も無形資産であることから、同時に注目が集まってきました。無形資産である人的資本は、企業価値に直接影響をもたらすものと考えられており、近年企業にますます重要視されています。この点も、注目されている要因の1つです。
人材版伊藤レポートの発表
人材版伊藤レポートが発表されたことも、人的資本経営が注目されている要因の1つに挙げられます。人材版伊藤レポートとは、経済産業省が発表した人的資本経営に関する報告書のことです。経営戦略と連動した人事戦略の策定と実践方法がまとめられています。発表以降、国内においては人的資本経営に対する関心が増しています。
人的資本経営に取り組むメリット
ここでは、人的資本経営に取り組むメリットについて解説します。
従業員の能力を可視化できる
人的資本経営に取り組む1つ目のメリットは、従業員の能力を可視化できる点です。人的資本経営を行なう際には、個人の能力を可視化する必要があります。個人の能力を可視化すれば、企業は適切な人材配置が可能となるでしょう。結果的に、従業員のパフォーマンスが上がる効果が見込まれます。
生産性が向上する
人的資本経営に取り組む2つ目のメリットは、生産性が向上する点です。人的資本経営では人材に投資するため、従業員のモチベーションやスキルが上昇しやすい傾向です。モチベーションやスキルが上がることは、企業全体の生産性向上につながります。企業全体の成長が、従業員のさらなる成長を促すことにもつながるため、好循環が期待できる点もメリットです。
企業イメージが上昇する
人的資本経営に取り組む3つ目のメリットは、企業イメージが上昇する点です。人材に積極的に投資する企業には、優秀な人材が集まりやすいといわれています。育成に力を入れる取り組みが認知されることで、企業イメージも向上するでしょう。企業イメージが上昇することで、社会的信頼を高める効果が期待できます。
人的資本経営のフレームワーク「3P5F」とは
ここでは、人的資本経営のフレームワークである「3P5F」について、わかりやすく解説します。
3P
3Pとは、企業価値を高め続ける人材戦略に必要となる3つの視点のことです。「P」は、視点を表す「Perspectives」を意味しています。
具体的な内容は、以下のとおりです。
・経営戦略と人材戦略の連動:人的資本経営では、経営戦略を実現する人材戦略の策定と実行が求められる
・As is‐To be ギャップの定量把握:現状(As is)と理想(To be)のギャップを把握することで、経営戦略と人材戦略を連動させられる
・人材戦略の実行プロセスを通じた企業文化への定着:実行した後に、企業文化として定着するかどうかの視点が必要
5F
5Fとは、どの企業も共通して取り入れるべき人材戦略の5つの共通要素のことです。「F」は、要素を意味する「Factors」を表しています。
具体的な内容は、以下のとおりです。
・動的な人材ポートフォリオの作成:スキルや経験、在籍部署や在籍期間など、人材を構成する内容をまとめた資料を作成する
・知・経験のダイバーシティ&インクルージョン:さまざまな個性や経験を持った従業員を雇用する
・リスキル・学び直し:従業員がスキルの習得や学び直しを行う
・従業員エンゲージメント:従業員の企業に対する貢献意欲を高める
・時間や場所にとらわれない働き方:在宅勤務やリモートワークなどを導入する
人的資本経営の課題
人的資本経営には、いくつかの課題があります。ここでは、人的資本経営の課題について解説します。
人材データが不足している
人的資本経営の課題は、人材データが不足している点です。人的資本経営を推進するためには、人材に関するデータを収集・分析しなければなりません。しかし、多くの企業では、人材データが不足しているのが現状です。また、散在している人事データの統合が難しいことも、課題として挙げられます。
経営層の意識改革ができていない
企業によっては、経営層が人的資本経営の重要性を十分に理解しきれていないことがあります。定義が難しいため、理解が進みにくいのが現状です。この点が、人的資本経営の課題です。人的資本経営は、経営戦略と人材戦略の一体化が前提であるため、経営層の理解が必須となります。そのため、まずは経営層の理解を得る必要があるでしょう。
企業の風土が変わりにくい
人的資本経営の課題は、企業の風土が変わりにくい場合に人的資本経営を浸透させにくい点です。一般的に、採用の手法は「ジョブ型」と「メンバーシップ型」の2種類に分けられます。メンバーシップ型は長期雇用を前提としており、これまで国内においては主流となっている方法でした。
人的資本経営にはジョブ型の採用が必要ですが、今なおメンバーシップ型を取り入れている企業が多い傾向です。優秀な人材が活躍できない企業風土が残っていると、優秀な従業員が活躍しにくくなります。
人的資本情報の開示が難しい
人的資本経営の課題は、人的資本情報の開示が難しい点です。人的資本は、投資効率や費用対効果を測定することが難しい事柄です。また、人的資本情報の開示の基準や方法も、明確には定められていません。そのため、人的資本経営を進めて情報を定期的に開示したとしても、有用性が十分に伝わらない可能性があります。
人的資本経営の課題を解決する方法
ここでは、人的資本経営の課題を解決する方法について解説します。
従業員の育成に力を入れる
人的資本経営を進めるためには、人材育成の強化が必要です。具体的には、スキルアップやキャリアアップを支援する体制を整えるとよいでしょう。また、従業員が持っている能力やスキルをデータとして可視化することも大切です。
経営層に対する教育を強化する
人的資本経営の課題を解決する方法は、経営層に対する教育を強化することです。人的資本経営を進めるうえでは、経営戦略と人材戦略の連動が必要となります。経営層の理解促進のためには、研修やセミナーを実施するとよいでしょう。経営層が人材の活用を重視する姿勢を示すことで、人的資本経営が推進されます。
人事制度・労働環境を整備する
人的資本経営の課題を解決する方法は、人事制度・労働環境を整備することです。従来の人事制度は、給与や評価など、従業員の成果が重視されていました。しかし、人的資本経営を進める際には成果主義ではなく、スキルや経験、潜在能力評価されるよう、人事評価を適正化する必要があります。
また、フレックスタイム制度や就業時間の自由選択制度など、労働環境を整え、従業員が満足できる体制づくりも重要です。
自社の指針を整備する
人的資本経営を進めるためには、ISO30414を参考にし、フレームワークとして組み込むとよいでしょう。そのうえで、人的資本の定義や測定方法を明確にし、自社の指針やガイドラインを整備します。この取り組みによって、投資家やステークホルダーが人的資本情報を活用しやすくなります。
人的資本経営の進め方
人的資本経営に取り組む際には、段階を追って導入を進めていく取り組みがおすすめです。人的資本経営を進める流れは、以下のとおりです。
1.企業理念と経営戦略を明確にする
2.企業理念と経営戦略を実現するための人事施策を検討する
3.人事施策のKPIを設定し、実行する
4.実施内容の開示方法を検討する
5.定期的に施策の改善を行う
まとめ
長期的な企業価値向上を目指すためには、人的資本経営の推進が欠かせません。まずは概要を理解し、自社でどのように進めていけるのかを検討しましょう。
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