SHARE
SHARE
中小企業において人的資本経営が必要な理由|実践手順やポイントについても解説
人的資本経営 |
近年、中小企業の間でも人的資本経営に注目が集まっています。この記事では、人的資本経営の導入を検討している企業に向けて、中小企業に人的資本経営が必要な理由や実施手順、成功させるために必要な要素などについて解説します。人的資本経営を成功させるためのポイントについても解説するため、ぜひ参考にしてください。
目次
人的資本経営とは
人的資本経営は、人材を資本とみなして投資の対象とする経営方法です。人材の価値を最大限に引き出し、中長期的に企業価値を高める目的があります。従来は、人材は消費するものと位置付けられていましたが、人的資本経営においては、人材を「磨き上げるもの」として位置付けています。
中小企業において人的資本経営が必要な理由
中小企業に人的資本経営が必要な理由は、次の2つです。
・企業の競争力を維持向上させるため
・人材不足を解消するため
以下で順番に解説します。
企業の競争力を維持向上させるため
大企業では、従業員の業務や役割が細分化されていることが多いですが、中小企業では、従業員1人あたりの業務の担当領域が広く設定されていることが多いです。担当領域が広いと、従業員個人のパフォーマンスが企業業績に直結しやすく、従業員個人の高いスキルが求められます。そのため、中小企業は人的資本経営に取り組むことで人材の価値を高め、企業の競争力を維持向上する必要があります。
人材不足を解消するため
近年、多くの中小企業で人手不足が深刻化しています。人手不足を解消するために、中小企業は求職者から自社を選んでもらえるような工夫が必要です。そこで重要になるのが、人的資本経営の考え方になります。人的資本経営の特徴は、人材を「コスト」ではなく「資本」と捉えることです。
人材への投資として、従業員が働きやすい風土や職場環境を整備していることを発信することで、求職者から自社を選んでもらえる可能性が高まります。また、人材流出の抑止にもつながるため、人手不足を解消したい中小企業におすすめです。
中小企業における人的資本経営の実践手順
中小企業が人的資本経営を実践する際の手順は、次のとおりです。
・現状把握と戦略策定
・KPIの設定
・施策実行
・施策の効果検証と改善
1つずつ解説します。
現状把握と戦略策定
人的資本経営を始める前に、まずは経営陣と人事担当者の認識をすりあわせます。その後、自社の理念を実現するために、解決すべき課題の洗い出しを行い、課題を解決するための経営戦略を考えます。また、策定した経営戦略を実現するための人材戦略も、忘れずに考えましょう。
KPIの設定
現状把握と戦略策定を行った後は、目標達成のためにKPIを設定しましょう。KPIとは、重要業績評価指標のことです。目標達成のプロセスをどの程度達成できているか計測するために設定します。さらに、KPIの設定によって目標達成に必要な施策を考案しやすくなるため、必ず設定するようにしましょう。
施策実行
KPIを設定したら、実際に施策を実行することが大切です。施策を実行する際に、従業員から施策に対する理解を得られなかったり、想定していた成果が出なかったりする場合があります。そのため、施策実行前にトラブルへの対策を考えておくことも重要です。
施策の効果検証と改善
人的資本経営を成功させるためには、施策の効果検証と改善が重要です。ただ、施策を実行するだけでなく、定期的に施策の効果が出ているかどうかを確認する必要があります。効果がない場合は、原因究明と原因の改善を図り、さらに効果的な施策に改善させましょう。
人的資本経営を成功させるために必要な3つの視点
人的資本経営を成功させるためには、次の3つの視点が必要です。
・経営戦略と人材戦略の連動
・現状と理想のギャップの把握
・人材戦略の企業文化としての定着
順番に解説します。
経営戦略と人材戦略の連動
人的資本経営は、経営戦略に連動した人材戦略の策定が重要です。経営視点と人事視点の両面から戦略を考える必要があります。戦略を実現するために、どのような人材が必要なのかを定義し、その定義に沿った人材採用や育成を行いましょう。
現状と理想のギャップの把握
人的資本経営を成功させるためには、目指すべき目標と現状のギャップを明確にする必要があります。ギャップの大小は重要ではなく、どのようにギャップを埋めるのかが重要です。目指すべき目標と現状のギャップを計測するために、改善指標や従業員のスキルなどの人事データを、収集・分析できる体制を構築しましょう。
人材戦略の企業文化としての定着
人的資本経営を成功させるためには、人材戦略を企業文化として定着させることも重要です。企業文化は、従業員の意識や行動によって作られるため、経営陣が根気強く、経営理念や存在意義を発信する必要があります。
人的資本経営を成功させるために必要な5つの要素
人的資本経営を成功させるために必要な要素は、次の5つです。
・動的な人材ポートフォリオ
・知や経験のダイバーシティとインクルージョン
・リスキルや学び直し
・従業員エンゲージメント
・場所や時間にとらわれない働き方
1つずつ解説します。
動的な人材ポートフォリオ
人的資本経営の成功に向けて、社内の部署にどのようなスキルや経験がある人材が、どれほど在籍しているのかを把握するために、動的な人材ポートフォリオを作成する必要があります。
現状を確認できる人材ポートフォリオを活用することで、従業員を適材適所に配置できるため、人材戦略がうまくいく可能性が高いでしょう。
知や経験のダイバーシティとインクルージョン
人的資本経営の人選においては、価値観や専門性の異なる多様な人材を受け入れ、経営に活かすことが重要です。多様な人材を受け入れることで、さまざまな経験や知見を経営に取り込み、時代や環境の変化に対応しながら、持続的に企業価値を向上させられます。
リスキルや学び直し
従業員のリスキルや学び直しを提供することも、人的資本経営における重要な要素です。企業は、従業員がリスキルや学び直しに、積極的に取り組めるような環境を提供することによって、自律的なキャリア形成や能力開発を支援する必要があります。
従業員にリスキルや学び直しを習慣付けることで、ビジネス環境の変化に柔軟に対応できる人材が揃うようになります。
従業員エンゲージメント
従業員エンゲージメントとは、企業に対する従業員の愛着心を指しています。やりがいや働きがいは従業員のパフォーマンスに直結するため、職場環境の改善や公正な人事評価制度を作ることで、従業員がやりがいをもって働ける環境を提供する必要があります。
場所や時間にとらわれない働き方
人的資本経営を実現するためには、場所や時間にとらわれない多様な働き方に対応することも重要です。ワークライフバランスの実現に貢献できるだけでなく、事業所の被災や感染症の流行などの緊急事態が発生した際に、問題なく事業を継続できる環境作りにも繋がります。環境整備だけでなく、業務の進め方やコミュニケーションの方法についても見直す必要があります。
中小企業が人的資本経営を実践する際のポイント
中小企業が人的資本経営を実践する際のポイントは、次のとおりです。
・経営陣と従業員間で積極的にコミュニケーションをとる
・施策の優先順位を決める
順番に解説します。
経営陣と従業員間で積極的にコミュニケーションをとる
中小企業が人的資本経営を実践する際は、経営陣側が積極的に従業員とコミュニケーションをとったり、自社の理念や経営ビジョンを発信したりして、従業員の理解を得る必要があります。一方的なコミュニケーションではなく、経営陣と従業員の双方向のコミュニケーションが重要です。
施策の優先順位を決める
人的資本に投資できるリソースに限りがある場合は、施策の優先順位を決めましょう。施策の優先順位は、人材戦略に基づいて決定してください。
まとめ
人的資本経営は、人材を資本と捉えて投資の対象にする経営方法です。人的資本経営は、人材の価値を最大限に引き出し、中長期的に企業価値を高められる点が魅力です。また、中小企業が人的資本経営に取り組むと、企業の競争力を維持向上できたり、人材不足を解消できたりするメリットがあります。
従業員エンゲージメントを向上させるにあたって、「ファイナンシャル・ウェルネス」も効果的な取り組みの1つです。従業員の経済的不安を解消することで、従業員に長く安心して働いてもらえるようになり、エンゲージメントの向上につなげることが可能です。
オンアドは「従業員のお金の悩み解決」を通じた人的資本経営実践を支援する「お金の福利厚生サービス」を提供しています。ぜひお気軽にお問合せください。
この記事を監修した人

株式会社オンアド
株式会社オンアドは野村ホールディングス、千葉銀行、第四北越銀行、中国銀行の4社により設立された投資助言会社です。「すべての人が最善のアドバイスにより、理想の未来をかたちにする」というビジョンのもと、商品販売を一切行わず、アドバイスに特化した新しい金融サービスをオンライン完結でご提供します。

この記事を監修した人
株式会社オンアド
株式会社オンアドは野村ホールディングス、千葉銀行、第四北越銀行、中国銀行の4社により設立された投資助言会社です。「すべての人が最善のアドバイスにより、理想の未来をかたちにする」というビジョンのもと、商品販売を一切行わず、アドバイスに特化した新しい金融サービスをオンライン完結でご提供します。