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人的資本経営における「ISO30414」とは|情報開示の方法やメリットも解説
人的資本経営 |
人的資本経営については、ISO(国際標準化機構)が作成したガイドラインがあります。
本記事では、人的資本経営の導入を検討している企業の経営者や管理職向けに、人的資本に関する情報を定量化し、開示するための指標であるISOのガイドライン「ISO30414」を解説します。
目次
人的資本経営に関する基礎知識
ここではまず、ISOのガイドラインを理解するうえで重要なポイントとなる、人的資本経営の概要について解説します。
人的資本経営とは
人的資本経営とは、人材をコストではなく資本としてとらえ、その価値を最大限に活用することで中長期的な企業価値の向上を目指す経営手法を指します。人的資本とは、個人が持つ才能や資質に加え、身に付けた能力、資格、スキルなどを資本とする考え方のことです。
人的資本の情報開示とは
人的資本の情報開示とは、自社の人的資本に関する情報を社外のステークホルダーに公開することです。上場企業等の大企業は、人材育成や労働慣行など、人的資本経営に関する7分野19項目の開示が2023年3月より義務化されています。開示情報には様々なデータや企業独自の取組みが記されています。
ISOに関する基礎知識
「ISO30414」のISOとは、一体何を表すのでしょうか。以下では、ISOや「ISO30414」の概要を解説します。
ISOとは
ISOは「International Organization for Standardization」の略で、日本語では「国際標準化機構」となります。ISOは、スイスのジュネーブに本部を置く、国際的に通用する規格を制定する非政府機関です。ISOが定めているのは、製品やサービスを世界中で、同じ品質やレベルを提供できるようにするための規格で、ISOが制定した規格は「ISO規格」と呼ばれます。
人的資本経営に関するガイドライン「ISO30414」とは
「ISO30414」は、人的資本経営のためにISOが規定したガイドラインです。マネジメントシステムの規格を指す「ISO30414」は、企業が自社の人的資本に関する情報を定量化し、開示するための指標です。
ISO30414の歴史
「ISO30414」は、企業経営において人的資本の活用が注目されている昨今の傾向を踏まえたうえで、2011年に技術委員会であるTC260が発足し、米国の機関投資家によるSECへのロビー活動を経て、2018年の公開に至ったとされています。
人的資本経営やISO30414が注目を集めている理由
それでは、一体なぜ今ビジネス業界で、人的資本経営やISO30414が注目されているのでしょうか。ここでは、それぞれが注目を集めている理由を解説します。
投資家のESGやSDGsに対する関心の高まり
「ESG」は、環境・社会・ガバナンスの頭文字を取ったもので、「SDGs」は持続可能な開発目標を意味します。近年、投資家は環境や人権などの問題に注目するようになりました。従業員育成や労働環境改善への注力、ひいては持続可能な社会へどのくらい貢献できるかといった点から、ISO30414への関心が高まっています。
2018年のコーポレートガバナンス・コード改訂
2018年6月に、会社が株主や顧客、従業員、地域社会などの立場を踏まえ、透明・公正に迅速な意思決定を行うための仕組みを意味する「コーポレートガバナンス・コード」が改訂されました。このコーポレートガバナンス・コードのなかで、人的資本の活用についての言及があり、ISO30414が注目される要因の1つになっています。
2020年に発表された人材版伊藤レポートでの言及
「ESG」や「コーポレートガバナンス・コード」が見直されるなか、経済産業省が2020年9月に人材版伊藤レポートを発表しました。人材版伊藤レポートでは、人的資本の活用戦略の重要性についての言及がされており、これもISO30414に注目が集まった大きな理由の1つといえるでしょう。
ISO30414の導入メリット
企業がISO30414を導入することで、一体どのようなメリットを得られるのでしょうか。以下で、詳しく解説します。
ステークホルダーへの確度の高い情報を提供できる
ISO30414に従った情報開示を実施すると、ステークホルダーに対して、自社の定性的・定量的な人的資本情報を提供することが可能です。客観性の高いデータを開示することで、ステークホルダーから適正な評価を得ることが見込めます。
戦略人事の実行に役立つ
戦略人事とは、企業が経営戦略を進めるため、戦略的に人事を検討すべきという考え方です。ISO30414を活用するためには、人的資本の情報を定量化する必要があります。そのため、結果としてISO30414の導入は戦略人事の実行にも役立つでしょう。
HRテクノロジーの健全な推進につながる
HRテクノロジーを正しく活用すると、従業員満足度や生産性の向上が期待できます。ISO30414に準拠した情報開示は、HRテクノロジーの健全な推進にもつながるでしょう。
ISO30414における情報開示の進め方
ISO30414にのっとった情報開示を進めるためには、どのような手順や準備が必要になるのでしょうか。以下で、詳しく解説します。
データ収集や可視化の環境整備
まずは、ISO30414の指標に関連するデータを計測するための環境を整備します。さらに、データ集計や分析を行うツールの導入も検討するとよいでしょう。
KPIの設定
データ収集ができたら、次に情報開示の目標を設定します。自社のビジョンに沿ったKPIを考えましょう。KPIとは「重要業績評価指標」のことで、目標達成の過程における達成度を観測するための指標です。
施策の実施や情報開示
KPIを設定したら、現状と理想のギャップをどのように埋めて行くか施策を考え、実行していきます。施策は、検証と改善を繰り返して行い、最終的にデータを整理して開示しましょう。
ISO30414の具体的な内容
ISO30414には、ステークホルダーの関心や重要性を踏まえ、「11領域49項目」の項目が設けられています。11領域は下記の通りです。領域ごとにより詳細な評価項目が設定されており、
これらの確認を通じて人的資本経営の取り組み状況や課題を可視化することができます。
・コンプライアンスと倫理
・コスト
・多様性
・リーダーシップ
・組織文化
・健康・安全・ウェルビーイング
・生産性
・採用・異動・離職
・スキル・能力開発
・後継者計画
・労働力
まとめ
ISO30414の導入は、ステークホルダーへの質の高い情報開示ができるほか、効果的な人事戦略の立案に役立てることもできます。ISOの定める11領域49項目を参考に、人的資本経営の実践を進めてみてはいかがでしょうか。
株式会社オンアドでは「従業員のお金の悩み解消」を通じた人的資本経営の実践をサポートする「お金の福利厚生サービス」を提供しています。従業員のお金にまつわる様々な疑問や不安を解消することで、生産性やエンゲージメントの向上に取り組むことが可能です。ご関心をお持ちの方は、ぜひお気軽にお問合せください。
この記事を監修した人

株式会社オンアド
株式会社オンアドは野村ホールディングス、千葉銀行、第四北越銀行、中国銀行の4社により設立された投資助言会社です。「すべての人が最善のアドバイスにより、理想の未来をかたちにする」というビジョンのもと、商品販売を一切行わず、アドバイスに特化した新しい金融サービスをオンライン完結でご提供します。

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