エンゲージメント経営とは？導入する方法や手順、メリットを解説

エンゲージメント経営とは、従業員と企業の信頼関係や愛着心を重視する経営手法です。離職率改善や生産性向上などの効果を期待できることから、近年、注目が高まるようになりました。

この記事では、エンゲージメント経営の定義や手法、注目される背景や導入手順、実践する際のポイント、企業事例を解説します。ぜひ参考にしてください。

エンゲージメント経営とは

ここでは、そもそもエンゲージメントとは何か、エンゲージメント経営の定義について解説します。

エンゲージメントとは

エンゲージメントは英語の「engagement」にあたり、「婚約」「誓約」「約束」「契約」といった意味があります。ビジネスの文脈における「エンゲージメント」とは、従業員と企業の関係で「愛着心」や「信頼関係」という意味を持つ用語です。従業員エンゲージメントという場合は、特に従業員が企業に対して抱く愛着心や信頼関係という意味になります。

エンゲージメント経営とは

エンゲージメント経営とは、従業員と企業の信頼関係や愛着心の向上を目指す経営手法です。双方にエンゲージメントが構築されている組織は、従業員のパフォーマンスや組織力が高い傾向があります。つまり、エンゲージメント経営とは、エンゲージメント向上によって業績向上を目指す経営手法と言えます。

従業員満足度との違い

従業員満足度とは、給与や上司、福利厚生といった会社の待遇や環境について、従業員が満足している度合いを表す指標です。一方、従業員エンゲージメントとは、従業員が企業に信頼関係や愛着心を持ち、自発的な貢献意欲を持っている度合いを表します。

たとえば、従業員が給与には満足しているものの、貢献意欲は持っていない場合は、従業員満足度は高く従業員エンゲージメントが低い状態になります。

エンゲージメント経営が重視される理由

近年、エンゲージメント経営というキーワードがよく使われるようになりました。企業から重視されるようになった背景について解説します。

労働力人口が減少しているため

日本でエンゲージメント経営が注目されるようになった背景には、少子高齢化による労働者不足があります。慢性的な人手不足や、離職率の高さに課題を抱えている企業は、従業員との関係を強化して人材定着につなげられる、エンゲージメント経営を取り入れるようになりました。

生産性の向上が期待できるため

生産性向上を図るために、エンゲージメント経営を取り入れる企業も増えています。エンゲージメントが高い従業員は、自発的に業務を改善したり、顧客に対するサービスの質を高めたりする傾向があるからです。エンゲージメントの醸成が生産性向上につながる企業事例が知られるようになるにつれて、エンゲージメント経営に取り組む企業が増えています。

エンゲージメント経営を導入するメリット

ここでは、エンゲージメント経営のメリットを、導入企業側の視点で3つ解説します。

従業員の離職率が改善できる

エンゲージメント経営を導入し、従業員が企業に対してもつ愛着や結びつきを強めることで、離職率が下がる傾向があります。エンゲージメントが高い従業員は、企業に対する強い貢献意識や帰属意識を持ち、長期的に働きたいと考えるからです。実際、従業員エンゲージメントと離職率に相関関係があることが調査でも確認されています。

従業員のモチベーションと生産性が向上する

エンゲージメント経営を導入すると、従業員のモチベーションと生産性向上の効果が高まります。エンゲージメントの高い従業員は、企業の経営方針や理念に共感を抱いており、企業のために自発的・積極的に行動する傾向があるからです。

企業の組織力が強まる

エンゲージメント経営の導入により企業と従業員の関係が向上すれば、組織力の強化にもつながります。また、組織に対する信頼があれば、果敢なチャレンジをしたり、上層部に積極的な提言をしたりする従業員が増えるでしょう。そのため、エンゲージメント経営は企業の競争力強化にも効果があります。

エンゲージメント経営を実践する方法

エンゲージメント経営にはいくつかの手法があります。ここでは、コミュニケーション活性化とMVVの浸透について紹介します。

コミュニケーションを円滑にする

風通しのよいコミュニケーションがなければ信頼関係の構築は進みません。経営理念や事業戦略といった重要な情報の共有も滞ってしまうでしょう。社内コミュニケーションを推進するためには、仕事関連の内容だけでなく、業務時間中や休憩時間に交わされる雑談も重要です。エンゲージメントを高めていくためには、仕事以前に人としての信頼関係の構築が欠かせません。

MVVを浸透させる

MVVとは、ミッション・ビジョン・バリューの頭文字をとった略語を意味します。つまりMVVは、経営目標や方向性、社会に対する提供価値などを端的に表現し、わかりやすく言葉にしたものです。

MVVを社内に浸透させれば、従業員からの共感が得られ、エンゲージメントとモチベーションの向上につながります。また、社外に浸透させれば企業採用活動にも役立ち、優秀な人材を確保して企業の成長につなげられるでしょう。

エンゲージメント経営を導入する手順

ここでは、エンゲージメント経営を導入する手順を、現状分析、問題点の可視化、施策実施の3ステップで解説します。

エンゲージメントスコアを測定する

自社のエンゲージメント状態を定量的、客観的に把握するために、エンゲージメントスコアを測定します。エンゲージメントスコアとは、従業員が自社の理念や目標に共感し、業務に対する意欲や生産性が高いかどうかをはかる指標です。主に社内サーベイで得た回答をもとに、個人や組織単位で数値化します。

問題点を可視化する

エンゲージメントスコアを分析すると、これまで見えていなかった問題点を可視化できます。たとえば、「中堅社員のエンゲージメントスコアが低い」「新事業の開始後、スコアが上昇した」といった傾向を把握できるでしょう。

仮に中堅社員のエンゲージメントスコアが低いのであれば、「企業と個人の目標が一致しておらずモチベーションが上がらないのではないか」などの仮説を立てられます。

具体的な施策を考える

問題点を可視化したら具体的な施策に落とし込みます。問題点が多い場合は、優先順位を付けて取り組むとよいでしょう。具体策としては新たな研修制度の追加や、個人目標の設定方法の改善などさまざまです。

中長期的な取り組みとなるエンゲージメント経営では、施策の一貫性を保つための細かなガイドラインも必要です。対策後、あらためてエンゲージメントスコアを測定します。

エンゲージメント経営を実践するときのポイント

エンゲージメント経営の実践にあたっては、エンゲージメントの性質上、注意しておきたいポイントがいくつかあります。

長期的に取り組む

エンゲージメント経営で効果を出すには、長期的な視点を持って取り組むことが重要です。エンゲージメントを向上させるための施策は、一般的な人材育成施策と異なり、業績に直結するものではありません。また、コミュニケーション活性化やMVV浸透など、多岐にわたる総合的な施策も必要です。

そのため、先に紹介した手順のように、改善のサイクルを地道に回していく必要があります。

従業員にも相談しながら対策を進める

エンゲージメント経営では、従業員からの意見も汲み取り、施策に反映させることが重要です。エンゲージメントは自発的、主体的なものなので、従業員の声に耳をすまし、共感や納得感を持ってもらう必要があります。

そのためには、従業員の不満や意見を聞く仕組みづくりが大切です。定期的な社内サーベイを実施したり、全社員が集まりMVVを共有する場を設けたりするなど、自社に合った仕組みを構築しましょう。

人事評価制度を可視化する

エンゲージメント経営では、人事評価制度を可視化することも重要です。企業に対する貢献意識を持ってポジティブな行動に移しても、それが正当に評価されない場合、モチベーションの低下につながるからです。

エンゲージメント経営において、人事評価はMVVと深く関係します。そのため、人事部に一存せずに、経営者が評価基準の作成をバックアップしながら、透明性の高い制度をつくることが必要です。

社内ツールを活用する

エンゲージメント経営において重要な、コミュニケーションの円滑化やMVVの浸透を促進するためには、社内ツールの活用が効果的です。

具体的には、部署や拠点を横断したグループコミュニケーションが可能な、ビジネスチャットツールが挙げられます。また、経営者からの情報発信や、気軽な雑談、意見交換などさまざまなコミュニケーションに活用できる社内SNSも、エンゲージメント経営に役立つツールです。

エンゲージメント経営の導入事例

ここでは、日本を代表する企業におけるエンゲージメント経営の事例を2つ紹介します。

株式会社リクルート

株式会社リクルートでは、エンゲージメントサーベイを軸に、職場の状態を可視化しています。回答率97%で広範囲に集められたサーベイ結果は、職場でのフィードバックミーティングに反映する仕組みが作られています。ミーティングでは互いの価値観の共有を図りながら、早期の課題発見やアクションプランの策定につなげています。

カンロ株式会社

カンロ株式会社は、インナーコミュニケーションを強化しエンゲージメントを高めています。エンゲージメント経営プラットフォーム「TUNAG（ツナグ）」を導入し、場所にとらわれない情報伝達と双方コミュニケーションを推進してきました。TUNAGはコミュニケーション活性化のための機能が充実していることが特徴です。

この取り組みは、エンゲージメント経営の実践企業を表彰するスタメン主催「エンゲージメントアワード2021」で、「ベストエンゲージメントカンパニー賞ベストルーキー部門」を受賞しました。

まとめ

従業員と企業の信頼関係、愛着心を軸にしたエンゲージメント経営の実践により、従業員の貢献意識や自発性を引き出していくことで、業績向上を目指せます。エンゲージメントの向上には、企業が従業員の悩みに寄り添うことも効果的です。 オンアドでは、従業員の「お金の悩み解決」を通じてエンゲージメント向上を支援する「お金の福利厚生サービス」を提供しています。ご関心をお持ちの方は、お気軽にお問合せください。