従業員エンゲージメントとは?向上させるメリットを解説

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多様な価値観への対応や、働き方改革への対応が求められる中、従業員の離職率を防ぎ、定着率を向上させるには、従業員エンゲージメントを高めるための施策が不可欠です。

この記事では、従業員エンゲージメントの概要や高めるメリット、方法などについて解説します。従業員エンゲージメントを高めたい人は、参考にしてください。

従業員エンゲージメントとは

従業員エンゲージメントとは、従業員が自発的に「自社に貢献したい」と思う意欲を指す言葉です。また、「愛社精神」や「愛着心」を指す言葉でもあります。ただし、「愛社精神」とは異なるという意見や解釈もあるなど、従業員エンゲージメントの具体的な定義は幅があるのが実情です。

エンゲージメントの意味

従業員エンゲージメントに用いられている「エンゲージメント(engagement)」とは、元々「婚約」「誓約」「約束」「契約」などの意味を持つ英単語です。ビジネスシーンにおいては、「職場(企業・団体)と従業員の関係性」や「自社と顧客との関係性」を表す際に用いられます。

従業員エンゲージメントの要素

従業員エンゲージメントを構成している要素は、下記の3点です。

・理解度:従業員が会社の理念やビジョンをどれだけ理解しているか

・共感度:従業員が会社や仲間に対してどれだけ共感の思いを持っているか

・行動意欲:従業員が会社の成長・成果に対してどれだけ自主的に動こうとしているか

従業員エンゲージメントに注目が集まっている理由

2018年に国際標準化機構(ISO)が、人的資本情報開示のためのガイドラインである「ISO30414」を発表しました。この発表されたISO30414が規定する指標に、エンゲージメントも含まれています。また、2020年には、SECが上場企業に対して人的資本の情報開示を義務化しました。このこともあり、エンゲージメントへの注目度がより一層高まっています。

さらに、国内では、2022年に人的資本経営に関わるさまざまな方針が、政府によって示されています。人的資本経営の認知が進むことにより、エンゲージメントへの関心も、さらに増していくでしょう。

従業員エンゲージメントに似た意味を持つ言葉

ここでは、従業員エンゲージメントに似た意味を持つ言葉と、それぞれの意味について解説します。

h3:ワークエンゲージメント

従業員エンゲージメントに似た意味を持つ言葉の1つに、ワークエンゲージメントが挙げられます。ワークエンゲージメントとは、仕事に対するポジティブで充実した心理状態を示す概念のことです。

ワークエンゲージメントの高さは、仕事に熱意を持ち、没頭し、十分な活力を持っている状態を表します。この定義は、オランダ・ユトレヒト大学のウィルマー・B・シャウフェリ氏によって提唱されました。

帰属意識

従業員エンゲージメントと混同されやすい言葉の1つに、帰属意識も挙げられます。帰属意識とは、自分が組織の一員であるという意識や感覚のことです。帰属意識の対象は、家庭や地域、社会、国、会社などあらゆる集団が含まれます。従業員の会社に対する帰属意識が高まると、従業員が社内の状況を自分ごととして捉えるようになり、責任感や貢献心が向上します。

ウェルビーイング

ウェルビーイングは、幸福で身体的、精神的、社会的すべてにおいて満たされた状態を指します。ウェルビーイングの概念は、1946年に世界保健機関(WHO)憲章の前文で、定義されました。従業員の仕事に対する意欲を高めるべく、ウェルビーイング経営という経営手法にも、近年注目が集まっています。

従業員エンゲージメントが重視されている理由

ここでは、従業員エンゲージメントが重視されている理由について解説します。

価値観が多様化しているため

従業員エンゲージメントが重視されている理由は、時代の変化にともない、従業員が仕事や会社に求める価値観が多様化しているためです。従業員は会社に対し、やりがいや共感できる理念、自分のスキルを活かして働ける環境、従業員同士のつながり、自らのキャリアアップなどを求めています。

このように、近年では会社に対して多くのものが求められているため、従業員が抱える価値観を把握し、希望に応える取り組みが必要です。

人材の流動性が高まっているため

従来、多くの会社では、終身雇用や年功序列制度といった働き方やシステムが一般的でした。しかし、近年では成果主義や実力主義を重んじる会社が増えています。生涯ずっと同じ会社で働き続けるのではなく、キャリアアップや自身の成長を求めて違う会社に移ることを前提としている従業員も、少なくありません。人材の流動性が高まる中、企業と社員の絆を深めるための取り組みが必要とされています。

従業員エンゲージメントを高めるメリット

従業員エンゲージメントを高めると、会社は一体どのようなメリットが得られるのでしょうか。ここでは、従業員エンゲージメントを高めるメリットについて解説します。

従業員のモチベーション向上

従業員のモチベーション向上は、従業員エンゲージメントを高めるメリットの1つです。従業員エンゲージメントが高まると、従業員は自分の仕事や会社の理念に価値を見出し、自ら積極的に業務に取り組むようになることが期待できます。モチベーションの高い社員が増えることで、会社の生産性向上も見込めるでしょう。

離職率の低下

従業員エンゲージメントを高めることで、従業員の離職防止につなげられる点も大きなメリットです。従業員エンゲージメントが高い従業員は、会社や職場の仲間に対する共感や帰属意識が高く、会社に貢献したいとの思いが強い状態です。結果として離職率が低下し、優秀な人材の流出を防ぐことが可能です。

顧客満足度の上昇

従業員エンゲージメントが向上すると、従業員の会社に対する思いや貢献意欲が高くなります。また、商品・サービスレベルの向上にも前向きに取り組むようになり、結果として顧客満足度の上昇をもたらすでしょう。

従業員エンゲージメントを高める方法

従業員エンゲージメントを高める方法には、一体どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、従業員エンゲージメントを高める方法について解説します。

会社のビジョンを浸透させる

従業員エンゲージメントを高める方法の1つは、会社のビジョンを浸透させることです。従業員が会社のビジョンを意識、理解していない状態では、向かうべき方向性が人によってバラバラになってしまいます。ビジョンを浸透させることで、会社が目指している方向性が明確になり、一体感を持って仕事ができるようになるでしょう。

会社のビジョンを浸透させるには、ビジョン共有に向けたミーティングの実施や社内報での発信などで、継続的に周知することがおすすめです。

人事評価制度を見直す

人事評価制度の見直しも、従業員エンゲージメントを高める方法の1つです。従業員が人事評価制度に不満を持っていると、従業員エンゲージメントはなかなか上がりません。もし人事評価制度に問題があるなら、公平感や納得感のある人事評価制度を構築する取り組みが必要です。正確かつ効率的に人事評価を行いたいなら、人事評価システムの導入も検討しましょう。

社内コミュニケーションを活発化させる 

活発なコミュニケーションは、従業員エンゲージメントを向上させます。そのため、社内コミュニケーションの活発化を図りましょう。社内コミュニケーションが積極的に行われると、従業員同士の関係性が深まります。従業員同士の絆が強まれば、会社に対する意識や業務に対する向き合い方もプラスに向きやすくなるでしょう。

具体的なコミュニケーション活性化の取り組みとしては、ランチミーティングの実施や、社内コミュニケーションツールの導入などが挙げられます。

成長機会を提供する

近年は、個人が積極的にキャリアを設計し、スキルを磨く時代へと、働き方が変化しつつあります。従業員エンゲージメントを高めるためにも、従業員に対して成長機会を提供できる体制を整えましょう。成長を望んでいる従業員の気持ちに応えられるよう、多様な機会を提供することが重要です。

成長機会の提供は、社内で活躍できる人材の育成にもつながります。育成の視点も踏まえ、研修プログラムの策定や、資格取得のサポートなどさまざまな成長機会を従業員に提供しましょう。

エンゲージメントサーベイとは

エンゲージメントサーベイとは、従業員のエンゲージメントを測定する取り組みのことです。エンゲージメントサーベイを実施する際には、会社への意見や職場における人間関係や働きがいなどに関する質問を行います。これにより、会社の現状と従業員の意向・傾向を明確化することが可能です。

エンゲージメントサーベイを実施する際のポイント

ここでは、エンゲージメントサーベイを実施する際のポイントについて解説します。

実施目的を明確にする

エンゲージメントサーベイを実施する前に、調査によってどのような問題を解決したいのか、何を測定したいのかを明確にするとよいでしょう。離職防止を目的とする場合、生産性向上を目的とする場合などによって、調査内容は変わってきます。また、実施目的を明示することによって従業員の理解と協力体制を得ておくことも重要です。

匿名で実施する

エンゲージメントサーベイを実施する際には、匿名で実施するようにしましょう。回答を匿名にすることで、従業員の率直な意見を聞けるようになります。また、実施にあたっては、従業員の不利益にならないことを事前に周知しておきましょう。従業員に安心感をもって回答してもらうことで、正直で率直な意見や課題を把握することが可能です。

フィードバックを実施する

エンゲージメントサーベイを実施した後には、調査結果のフィードバックを実施しましょう。フィードバックがないと、従業員は調査の目的がわからず、今後協力しなくなってしまう恐れがあります。ひいては、従業員のモチベーション低下にもつながるでしょう。分析結果を確実に伝え、改善に取り組む姿勢を見せることをおすすめします。

従業員エンゲージメント向上の取り組み事例

ここでは、従業員エンゲージメント向上の取り組み事例を紹介します。

スターバックス

スターバックスは、従業員エンゲージメントを向上させるための取り組みを行っている企業の1社です。スターバックスは、「Engaged Partners」という理念を掲げて経営を行っています。同社はスタッフをパートナーと呼び、理念に共感してもらうように働きかけてきました。従業員に対してオープンな姿勢を示すことで、従業員エンゲージメントを高めています。

このように、従業員が自発的に優れたサービスを提供できる環境を整えることで、顧客満足度の向上を図っている点も、同社の特徴です。

LIXIL

LIXILも、従業員エンゲージメントの向上に向けた施策を行っている企業の1社です。LIXILは、従業員が柔軟で多様な働き方を実現できるための環境整備に取り組んでいます。具体的な取り組みとしては、スーパーフレックス制度を導入する、テレワークを前提とする「在宅型従業員」と事業所への出勤を前提にした「出勤型従業員」を明確にするなどが挙げられます。

副業制度の導入もあわせて行っており、豊富な選択肢を用意することで、従業エンゲージメントを高めています。

まとめ

従業員がよりモチベーションを持って会社で働くためには、従業員エンゲージメントの向上が欠かせません。自社の状況を鑑みたうえで、適切な施策を打ち、従業員エンゲージメントを高めましょう。

従業員が抱えているお金の悩みの解決も、従業員エンゲージメントを高める施策の1つです。オンアドは、従業員の「お金に関する悩み解決」を通じてエンゲージメント向上を支援する「お金の福利厚生サービス」を提供しています。お気軽にお問い合わせください。


この記事を監修した人

株式会社オンアド

株式会社オンアドは野村ホールディングス、千葉銀行、第四北越銀行、中国銀行の4社により設立された投資助言会社です。「すべての人が最善のアドバイスにより、理想の未来をかたちにする」というビジョンのもと、商品販売を一切行わず、アドバイスに特化した新しい金融サービスをオンライン完結でご提供します。

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